バヤンザグ(燃える崖)

バヤンザグは、ウムヌゴビ県ブルガン郡のアルツ・ボグド山沿いの谷にある、粘土質の堆積層とサクサウルの林が広がる景勝地です。南北に伸びる幅約5km、長さ約8kmの地形で、大きく2つの区域に分かれます。
南側の「ウラーン・エレグ(赤い岸)」は、何千年ものあいだ風雨に削られてさまざまな形になった赤い崖です。北側には、ゴビ原産のサクサウルが群生する林「バヤンザグ」があります。赤みを帯びた粘土が固まった崖を「ツァブ」、その上に突き出た細い岩の柱を「ツォンジ」と呼び、ツォンジの高さは20〜50m。形から「テーブル粘土」「ラクダ粘土」などの名前でも呼ばれています。
ここは世界の古生物学に数々の新発見をもたらした名高い場所で、恐竜が卵を産んで増えることを確かめた地でもあります。1921〜1923年、アメリカの探検家R・C・アンドリュースが率いる探検隊は、古代人の痕跡を探してアジアへやって来ました。北京からウリアスタイまで約1,600kmを調べて回り、帰り道の夕暮れ、沈む夕日で赤い崖が火のように燃えて見えたことから、ここを「燃える崖(フレーミング・クリフス)」と名付けました。
調査では、巨大なサイに似たバルキテリウムやプシッタコサウルス、卵を抱くオヴィラプトル、ヴェロキラプトル、サウロルニトイデスなどの化石や、恐竜の卵と巣が見つかりました。隊員のジョージ・オルセンは1923年、バヤンザグで見つかった巨大な卵の中に、恐竜の骨が化石になって残っていることを確かめ、「恐竜は子を産むのではなく卵を産む」ことを人類に初めて伝えました。アンドリュースは、モンゴルのゴビを「ゴビ」の名で世界に知らしめた人物でもあります。
バヤンザグには、化石のほかにも古代の人々が暮らした大きな痕跡が残っています。また、アジアとヨーロッパを結んだ「茶の道」の歴史ともつながっています。北京を出発した商人たちは、フフホトや現在のガシューンスハイト国境付近からモンゴルに入り、バヤンザグを通ってハルホリン、ウリアスタイ、ホブドへ、さらにトルキスタンやカシュガルまで向かいました。それを裏づけるラクダ隊商の道の遺跡が、ここにあります。
バヤンザグは、ゴビを代表する動植物と鳥の宝庫でもあります。ゴビの樹木を代表するサクサウルのほか、モンゴルのレッドブックに載る寄生植物シスタンケ(ツァガーン・ゴヨー)の主な生育地で、ゴビの生態系のバランスを保つうえで重要な植物とされ、薬用としても貴重です。モンゴリアン・グラウンド・ジェイ、ノガン、アジアン・デザート・ウォーブラーなどの鳥も生息しています。
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